Harpsichordist TOMOKO MATSUOKA
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          イタリア便り
 
2009.3.5 N.12
「パラッツォ・クレーリチ」


3月になりました。音楽院は中間試験期間中で、4時間の楽曲分析の試験を無事終えたところです。 私の部屋には小さなお雛様を飾り、外は、なんとなく春の匂いがするような気がします。 食卓には、数日前から日本に一時帰国している友人一家にいただいたポピーが元気に咲いています。

今日は、18世紀の宮殿でフォルテピアノを弾いたときのことを、忘れないうちに書いておきます。 ミラノの中心部に位置するこのPalazzo Clerici (クレーリチ宮殿)は、18世紀初頭の建築で、 タペストリーの間にはティエポロのフレスコ画があります。

18世紀の宮殿の大広間という、この上ない贅沢な空間で、初めて楽器を触れたときの驚きは、 とても新鮮でした。もちろん、当日の楽器を使ってのリハーサルは、違う場所で何度か行いましたが、 場所が変わると楽器の音も信じられないくらい変わり、無理しなくてもパーンと飛んでいく音にはびっくりしました。 とても感動的でした。

使用楽器は、1790年代のドゥルケンのコピーで、すべての音にそれぞれ2本ずつの弦があるのですが、 それだとどうしても高音が弱く、クリアでないのです。(そのすぐ後の、ヴァルターなどは、 高音域に3本の弦を張るようになります) そのため、高音域と低音域のバランスをとるのが難しかったのですが、当日の演奏会場では、 見事に高音が響きました。やはり、こういう場所で弾くために作られた楽器なのだなぁと、心から思いました。

そしてなんと、1771年にはイタリア旅行中であったモーツァルトが、この宮殿に立ち寄っています。 かなり前に読みたいと思って購入した「モーツァルトのイタリア旅行」という本 (I viaggi di Mozart in Italia, Rudolph Angermuller) が本棚にあったのを思い出し、 そのときのことが書いてあるかもしれないと思い、取り出してみたのですが、 特にパラッツォ・クレーリチについての記述は、残念ながらありませんでした。

過去にモーツァルトが居た空間で、再び彼の音楽を鳴らすというのは、言葉で表せないくらい感動的でした。 こうして、ますます日本に帰れなくなってしまうのです・・・。
 
 

バックナンバー
2009.2.8 N.11 「スカラ座 当日券の話」
2009.2.6 N.10 「スカラ座」
2009.1.13 N.9 「オリジナルのフォルテピアノ」
2009.1.1 N.8 「賀春2009」
2008.11.7 N.7 「オバーマ!」
2008.10.8 N.6 「秋ですね」
2008.6.22 N.5 「ミラノの夜」
2008.6.14 N.4 「パレルモの喧騒」
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2008.3.27 N.2 「ショートオクターヴの1週間」
2008.2.26 N.1 「コンセルヴァトーリオ(音楽院)の試験」