Harpsichordist TOMOKO MATSUOKA
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          イタリア便り
 
2008.5.2 N.3
Stefano Montanari氏のマスタークラス


ご無沙汰してしまいました。
先月は演奏会が集中してしまって、イタリア便りを書こうと思いつつ、 あれよあれよとあっという間に時間が過ぎ、気がつくと月が替わっていました。 今回は、4月にコモ音楽院で行われた、バロックヴァイオリンのStefano Montanari氏の マスタークラスについて、書きたいと思います。

私は、ヴァイオリンの生徒ではありませんが、参加していた生徒さん達の伴奏を 頼まれ、マスタークラスに参加する機会に恵まれました。 さすがに、あまり突然にピアノ譜(通奏低音の数字もない)を渡されたりしたときには、 私はチェンバロを弾くのに・・と寂しくなりましたが、あの素晴らしかった5日間を思い出すと、 そうした時間をみんなと共有することができて良かったなと、心から思います。

とにかくStefano(ここからは、名前で呼ばせていただきます)はすごいんです! 彼の演奏はもちろんですが、教え方も素晴らしかったです。 音楽に対する果てしない想像力、そしてそこから出てくるヴァイオリンの音には 鳥肌が立ちました。またヴァイオリンという楽器の可能性を再認識させられるような 表現や強弱。「古楽だから繊細でおとなしい」というようなイメージは捨てて、 「もっともっとピアノ!」「もっとフォルテが出せるでしょう!!」と、よく言っていたのを 覚えています。そういわれて、超ピアニッシモの音を出してみた生徒さんは、自分でも すごくびっくりした様子でした。そのようにして、新たな息吹を与えられた音楽は、 本当に色彩豊かでした!ちなみに、参加者の多くはモダン楽器を使用していました。

私も以前、イタリアのバロックオーケストラの養成コースに参加したときに、イタリア人の 先生が「もっとピアノ」「もっとフォルテ」と言っていたのを思い出します。 そしてまた今回のマスタークラスに接して、再び、バロック音楽や表現一般における 可能性を目の当たりにしました。 こうした優れたイタリア人の古楽器演奏家は、とても興味深く、北ヨーロッパの品の良い 古楽に比べて、新たな可能性を感じます。

近年、古楽の勉強にイタリアに来る人がどんどん増えているのも、そうした魅力と関係が あるのかもしれません。

 
 

バックナンバー
2008.3.27 N.2 「ショートオクターヴの1週間」
2008.2.26 N.1 「コンセルヴァトーリオ(音楽院)の試験」