Harpsichordist TOMOKO MATSUOKA
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          イタリア便り
 
2008.3.27 N.2
ショートオクターヴの1週間


今月、教会のオルガンを弾くコンサートがあったのですが、そこには、 1835年にAngelo Amati というイタリア人が作ったオルガンがあると聞いて、 楽しみにリハーサルに行きました。

そこで発見したショートオクターヴ(短いオクターヴ)。 イタリア語ではオッターヴァコルタといいますが、どういうことかというと、 音域の一番最後のドからドのオクターヴが見た目はミまでしかないのに、 ちゃんとドまで音があるんです。ド、シ、ラ、ソ、ファまでは普通なのですが、 その後、ミはソ#を押して、レはファ#、ドはミを押すと出るようになっているんです! 分かります?

このような楽器が普通に使われていた何百年も昔は、横幅(音域)の 狭いコンパクトな楽器に、より多くの音があるという、大変便利なもの だったと思いますが、今日、こうした楽器に触れる機会は少ないので、 慣れるのに時間がかかります。

これをもう少しリアルな感覚で説明すると、リハーサル中、曲を弾いていて、 ラbだと思って弾いたらミが鳴って、「うそっ・・!?」と思い、ショートオクターヴで あることが判明、一緒にリハーサルしていた歌手の二人に一生懸命説明して、 「ラbが無い!!!」とワーワーひとりで焦っていた訳です。 だって、その辺のラbもファ#もミbも存在しないのです!

それで、リハーサルから帰ってきてからは、家のチェンバロをショートオクターヴに 調律して、気を取り直してコンサートまでの1週間、ショートオクターヴで過ごしたわけです。 一週間の効果は見事に現れ、逆に今度は同じ曲を普通の鍵盤で弾くのに、 ショートオクターヴの癖が取れないくらいです(笑)

また、フローベルガーのトッカータで、私の手では絶対につかめない和音を、 ショートオクターヴによって初めて聞くことが出来たのは感動的でした。 この感動を、私の先生に話したのですが、先生の手は大きく、「僕はつかめるけど」 と遠慮がちに言われ、同じ感動を分かち合えなくてちょっぴり残念でした・・・

最後になりましたが、素晴らしいオルガンでした。

 
 

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