読売新聞
2007年10月13日(夕刊)
次世代 人
松岡友子さん(チェンバロ奏者)
表現力豊かな楽器に「恋」
今年8月にベルギー・ブルージュで開かれた権威ある国際古楽コンクールのチェンバロ部門で、1位なしの3位に入賞した。
本選では確かな技巧と抜群のリズム感でJ・S・バッハとラモーの曲を演奏し、聴衆に強い感銘を与えた。
「10日間で3`やせるほどのプレッシャーでしたが、ベストの演奏ができた」と話す。
最初はピアノを学んでいた。チェンバロに転向したのは高校3年の夏、著名なチェンバロ奏者、曽根麻矢子さんの講習会に
参加したのがきっかけだった。「ラモーやL・クープランなど、それまで知らなかった優雅できらびやかな音楽世界が目の前に広がり、
たちまち楽器に魅了されました」
高校卒業と同時にイタリア・ミラノの音楽院に留学し、チェンバロのほかオルガン、室内楽、対位法などを学んだ。
「まるで楽器に恋したかのように夢中でした」と当時を振り返る。特に初期のイタリア・バロックに強くひかれ、
ダンテやタッソーなどルネサンス期の文学やダンスにも親しんだ。
「チェンバロはとてもダイナミックで表現力豊かな楽器。またバード、フレスコバルディ、ブクステフーデといった古典派以前の
膨大なレパートリーに出会えるのも楽しい」。8年を超えたミラノでの生活を満喫し、一時帰国のたびに「考え方までイタリア人らしく
なったと言われる」と苦笑する。今後もヨーロッパを中心に活動していくつもりだ。
ヨーロッパの古い時代の音楽を当時のスタイルで演奏する古楽は、クラシックのジャンルのひとつとして定着した。
「学究的なアプローチだけでなく、現代の視点から音楽に新たな魅力を与えていきたい」と抱負を語る。
(松本良一氏)
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